「受発注システムを導入したいけれど、既存のサービスで十分なのか、それとも自社専用に開発するべきなのか」
このように迷う担当者もいるのではないでしょうか。
例えば、取引先によって商品の価格が違ったり、注文後に数量が変更されたりする場合、一般的なサービスでは対応できないことがあります。
一方で、すべての業務に合わせてシステムを開発すると、必要以上に費用がかかる可能性もあります。
大切なのは、既存サービスで対応できる業務と、個別開発が必要な業務を見極めることです。
この記事では、SaaS・パッケージ・個別開発の違いを整理し、実際の受発注業務を例に、自社に合った方式を選ぶ方法を解説します。
受発注システムはSaaSと個別開発のどちらを選ぶべき?
結論から言うと、一般的な受発注業務であればSaaSを優先して検討し、自社独自の処理が多い場合は個別開発も選択肢に入れるのが基本的な考え方です。
ただし、取引先ごとの価格設定や分納などに対応したSaaSもあります。独自の業務があるからといって、必ずしも個別開発が必要になるわけではありません。
まずは3つの方式を整理しましょう。
| 方式 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| SaaS | インターネット経由で既存サービスを利用する | 標準機能で業務を進められる |
| パッケージ+設定・追加開発 | 既存製品を活用し、必要な部分を調整する | 一部に独自の業務ルールがある |
| 個別開発 | 自社の業務に合わせてシステムを設計・開発する | 既存製品では対応が難しい重要な業務がある |
※SaaSにも設定・拡張機能を持つ製品があります。ここでは比較しやすいように、3つの導入方法に分けています。
SaaSは、標準機能が業務に合えば比較的短期間で導入できる場合があります。ただし、既存システムとの連携や取引先の移行が必要な場合は、その分の準備が必要です。
個別開発は自由度が高い一方、開発期間や保守費用も考えなければなりません。
そのため、最初からどちらかに決めるのではなく、現在の業務を確認することが重要です。
まず、注文から出荷までの流れを整理する
システムを選ぶ前に、現在の注文がどのように処理されているかを整理しましょう。
例えば、次のような流れです。
| 段階 | 確認する業務 |
|---|---|
| 注文受付 | FAX、メール、Web、EDI、営業担当による入力 |
| 注文処理 | 在庫確認、価格確認、承認、納期回答 |
| 注文変更 | 数量変更、キャンセル、分納、代替品への変更 |
| 出荷・請求 | 出荷指示、納品、売上計上、請求、会計処理 |

ここで重要なのは、新しいシステムでどこまで対応したいのかを決めることです。
例えば、FAXで受け取った注文を担当者がExcelへ入力し、その後、販売管理システムにも入力しているとします。
この場合、Web注文を受け付けるSaaSを導入しても、販売管理システムへの入力が残れば、期待したほど作業が減らない可能性があります。
受注受付だけを改善したいのか、在庫確認や請求まで自動化したいのかによって、必要な機能は変わります。
判断ポイント1:自社独自の取引ルールに対応できるか
受発注システムを選ぶうえで、特に確認したいのが取引先ごとに異なるルールです。
例えば、次のような業務があります。
- 取引先によって同じ商品の販売価格が違う
- 一度の注文を複数回に分けて納品する
- 注文後に数量や納品先が変更される
- 在庫がない場合に代替品を案内する
- 一定金額以上の注文には上司の承認が必要になる
こうした業務は、既存のSaaSでも対応できる場合があります。
ただし、すべての製品に必要な機能が用意されているわけではありません。

具体的にどう判断する?
| 現在の業務 | 確認・検討すること |
|---|---|
| 取引先ごとに価格が違う | SaaSに取引先別の価格設定機能があるか |
| 注文変更が月に数件しかない | 手作業を残しても問題ないか |
| 毎日、多くの注文で分納が発生する | 分納を管理できる製品があるか |
| 承認の条件が複雑 | 標準の承認設定で対応できるか |
| 独自ルールが多く、既存製品では対応できない | 個別開発が必要か |
注意したいのは、独自ルールが多いだけで個別開発を選ばないことです。
例えば、年に数回しか発生しない特別な注文であれば、担当者が手作業で対応する方が費用を抑えられる場合もあります。
反対に、毎日発生する処理を手作業にすると、システムを導入した後も負担が残ってしまいます。
発生する回数と、ミスが起きたときの影響を確認して判断しましょう。
判断ポイント2:今使っているシステムと連携できるか
受発注システムを導入する際は、既存の販売管理システムや在庫管理システムとの連携も重要です。
例えば、新しいシステムで注文を受け付けても、その内容を毎回Excelに出力して加工し、別のシステムへ入力する必要があれば、担当者の作業は残ります。
そのため、次の点を確認しましょう。
- 注文データを既存システムへ渡せるか
- 商品コードや取引先コードを合わせられるか
- 在庫数や注文状況を更新できるか
- データの受け渡しに失敗した場合、誰が対応するか
- 連携機能の利用に追加費用や制限があるか

SaaSと個別開発を組み合わせる方法もある
すべてをSaaSにするか、すべてを個別開発するかの二択ではありません。
例えば、注文受付にはSaaSを使い、既存の販売管理システムへデータを渡す部分だけ個別に開発する方法もあります。
この方法であれば、既存サービスの機能を活用しながら、必要な部分だけ自社の環境に合わせられます。
ただし、SaaS側のAPIやデータ出力機能に制限がある場合は、実現できないこともあるため、事前確認が必要です。
判断ポイント3:取引先にも使ってもらえるか
自社にとって使いやすいシステムでも、取引先が利用できなければ、注文方法を統一することは難しくなります。
例えば、現在は次のような取引先があるかもしれません。
- Web画面から注文できる取引先
- EDIによるデータ連携が必要な取引先
- CSVファイルで注文データを送る取引先
- FAXやメールでの注文を希望する取引先
すべての取引先を一度にWeb注文へ変更できるとは限りません。
そのため、新しい注文方法へ移行できる取引先と、これまでの注文方法を残す必要がある取引先を分けて考えることが重要です。
また、システムの利用料金だけでなく、取引先への案内や操作説明、問い合わせ対応にかかる負担も確認しましょう。
判断ポイント4:業務ルールの変更に対応できるか
受発注業務では、取引先の追加や価格の変更などが発生します。
例えば、次のような変更です。
- 新しい取引先が増える
- 商品の価格を変更する
- 承認する担当者が変わる
- 新しい倉庫や拠点が増える
- 注文時に入力する項目を追加する
SaaSであれば、管理画面から変更できる項目もあります。
一方、個別開発の場合も、管理画面を用意しておけば担当者自身で変更できるように設計できます。
重要なのは、日常的に発生する変更を、開発会社へ毎回依頼しなくても対応できるかです。
また、導入時の費用だけでなく、今後3年程度を想定し、利用料金、変更費用、保守費用なども比較しましょう。
SaaS・パッケージ・個別開発の選び方を比較
ここまでの内容をもとに、どの方式を検討すべきか整理します。
| 確認すること | 検討する方向 |
|---|---|
| 一般的な受発注業務が中心で、標準機能で対応できる | SaaSを優先して検討 |
| 一部の業務だけ独自の設定が必要 | SaaSの拡張機能やパッケージを確認 |
| 毎日発生する重要な処理が標準機能では対応できない | 個別開発を含めて検討 |
| 既存の販売管理システムとの連携が必要 | SaaSの連携機能と追加開発の必要性を確認 |
| 取引先によって注文方法が異なる | 複数の注文方法を扱える仕組みを検討 |
| 業務ルールが頻繁に変わる | 設定変更の自由度と変更費用を比較 |
この表だけで方式を決める必要はありません。
例えば、取引先別の価格設定が必要でも、その機能を備えたSaaSであれば、個別開発をしなくても対応できます。
反対に、標準機能では対応できず、日常業務に大きな負担が残る場合は、個別開発を検討する理由になります。
セキュリティや障害時の対応も確認する
方式を選ぶ際は、機能だけでなく、次の点も確認してください。
- 取引先ごとに閲覧・操作できる情報を制限できるか
- 注文データのバックアップを取得できるか
- システムが停止した場合に注文をどう受け付けるか
- 将来別のシステムへ変更するとき、データを取り出せるか
受発注業務は日々の取引に関わるため、導入後の運用も含めて選ぶことが大切です。
迷ったら、実際の注文を使って試してみる
製品の説明資料だけで判断するのではなく、実際の注文を使って確認する方法がおすすめです。
例えば、次の5つの注文を用意します。
- 最も多く発生する一般的な注文
- 取引先ごとに特別な価格が設定された注文
- 在庫不足によって分納が必要な注文
- 注文後に数量や納品先を変更する注文
- 販売管理システムとのデータ連携が必要な注文
実際の取引情報を使う場合は、取引先名や価格などの機密情報を匿名化します。
SaaSであれば試用環境、パッケージであればデモ画面などで確認します。
個別開発の場合は、画面案や簡単な試作品、データの流れを使って確認する方法があります。
何を確認すればいい?
例えば、分納が必要な注文であれば、次の点を確認します。
- 一つの注文を複数回に分けて出荷できるか
- 出荷済みと未出荷の数量を確認できるか
- 分納した場合でも請求金額を正しく計算できるか
- 担当者が別のシステムへ入力し直す必要がないか
「対応できます」という説明だけではなく、実際にどの操作が必要で、どこに手作業が残るかまで確認することが大切です。
こうした確認を行うことで、導入後に想定外の作業が残るリスクを減らせます。
システム開発の発注をどのように進めるかについては、次の記事でも解説しています。
システム開発の発注は何から始める?初めてでも迷わない11ステップと準備するもの
個別開発を依頼する前に確認したいこと
既存のSaaSやパッケージでは対応が難しい場合、個別開発を検討します。
ただし、開発会社へ相談する前に、すべての機能を細かく決める必要はありません。
まずは、次の内容を整理しておくと相談が進めやすくなります。
- 現在の受発注業務で困っていること
- 注文件数や取引先の数
- 自社独自の取引ルール
- 連携が必要な既存システム
- 必ず対応したい業務と、後から追加してもよい機能
- 希望する導入時期と予算の目安
例えば、「FAXの注文をなくしたい」という相談でも、注文をWebで受け付けたいだけなのか、その後の在庫確認や請求まで自動化したいのかで、必要な開発範囲は変わります。
見積もりでは初期費用だけを比較しない
SaaSと個別開発を比較するときは、費用に含まれる作業範囲も確認しましょう。
| 費用項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 設定、要件整理、基本開発 |
| 外部連携 | 既存システムとのデータ連携 |
| データ移行 | 商品情報、取引先情報、過去データ |
| 取引先への対応 | 利用案内、操作説明、切り替え支援 |
| 運用・保守 | 利用料金、障害対応、問い合わせ対応 |
| 将来の変更 | 機能追加、業務ルール変更 |
例えば、SaaSの月額料金が安くても、既存システムとの連携に別途開発費用が必要であれば、全体の費用は増えます。
個別開発についても、初期費用だけでなく、導入後の保守や変更にかかる費用を考える必要があります。
システム開発の見積もりの確認方法については、こちらの記事を参考にしてください。
システム開発の見積もりの見方は?内訳・比較ポイントをサンプル付きで解説
また、導入後の保守範囲については次の記事で解説しています。
システム開発の保守はどこまで必要?止まったときの影響から考える保守体制
まとめ|自社の業務に合った方式を選ぶことが大切
受発注システムは、必ずしも個別開発が必要なわけではありません。
既存のSaaSやパッケージで十分に対応できる場合もあります。
一方、取引先ごとに異なるルールや、既存システムとの複雑な連携がある場合は、個別開発が必要になることもあります。
方式を選ぶ際は、次の4つを確認しましょう。
- 自社独自の取引ルールに対応できるか
- 今使っているシステムと連携できるか
- 取引先にも利用してもらえるか
- 将来の業務変更に対応できるか
最初からSaaSか個別開発かを決めるのではなく、現在の業務で何が問題になっているのかを整理し、その問題を解決できる方法を選ぶことが重要です。
参考にした外部情報
- 中小企業庁:中小企業の受発注デジタル化
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/digitalization/index.html - 中小企業共通EDI
https://www.edi.itc.or.jp/ - IPA:ユーザのための要件定義ガイド 第2版
https://www.ipa.go.jp/archive/publish/tn20191220.html
※本記事の判断表は、受発注システムの選定時に確認したい項目を独自に整理したものです。
受発注システムの開発についてのご相談
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