システム開発会社から見積書を受け取ったものの、「この金額は高いのか」「何にいくらかかっているのか分からない」と悩む担当者は少なくありません。

システム開発には、一般の商品と同じような決まった価格がありません。必要な機能、開発期間、品質、開発後のサポートなどによって、見積金額が大きく変わるためです。

そのため、見積書は合計金額だけでなく、何の作業が含まれているかを確認することが重要です。

この記事では、システム開発の見積もりが決まる仕組み、見積書の内訳、複数社を比較するときのポイントを、発注担当者向けに分かりやすく解説します。

開発規模ごとの金額を先に確認したい方は、システム開発の費用相場と、見積もりが2〜3倍変わる理由をご覧ください。

システム開発の見積もりは「工数×単価」が基本

システム開発の費用は、主に次の考え方で計算されます。

見積金額の目安 = 作業工数 × 担当者の単価 + その他の費用

見積金額は工数と単価とその他の費用から決まる

「工数」とは、作業に必要な時間や人数のことです。システム開発の見積書では、主に「人日」や「人月」という単位が使われます。

単位 意味
1人日 1人が1日作業する量
5人日 1人が5日、または5人が1日作業する量
1人月 1人が1か月作業する量。一般的には約20人日前後だが、会社によって異なる

例えば、ある機能の開発に10人日かかり、1人日あたりの単価が5万円なら、単純計算では50万円です。

ただし、実際の開発ではプログラミング以外にも、打ち合わせ、設計、テスト、進捗管理などが必要です。そのため、画面上で見える機能が少なくても、見積金額が想像より高くなることがあります。

システム開発の見積書に含まれる主な項目

システム開発の要件定義から保守・運用までの主な工程

一般的な見積書には、次のような項目が記載されます。会社によって名称は異なりますが、確認する内容はおおむね同じです。

要件定義

どのようなシステムを作るのかを整理する工程です。

  • 解決したい業務上の問題
  • 必要な機能
  • 利用する人
  • 必要な権限
  • セキュリティや性能
  • 開発する範囲と開発しない範囲

ここが曖昧なままだと、開発途中で認識の違いが見つかり、追加費用や納期の延長につながることがあります。

設計

要件定義で決めた内容を、実際に開発できる形に落とし込む工程です。

画面の構成、操作の流れ、データの保存方法、外部サービスとの連携方法などを決めます。

デザイン

画面の見た目や使いやすさを整える費用です。

管理画面のように操作性を重視する場合と、一般ユーザー向けサービスのように見た目まで細かく作り込む場合では、必要な工数が異なります。

開発・実装

設計した内容をもとに、エンジニアが実際にシステムを作る工程です。

ログイン、検索、予約、決済、データ出力など、必要な機能が増えるほど工数も増えます。

テスト

完成したシステムが想定どおりに動くか確認する工程です。

  • 機能ごとの動作確認
  • 機能を組み合わせた動作確認
  • スマートフォンやパソコンでの表示確認
  • アクセスが増えた場合の確認
  • 不具合の修正と再確認

テストの工数が極端に少ない場合は、必要な確認がどこまで含まれているかを確認しましょう。テスト範囲が限定されていると、納品後に想定外の不具合が見つかる可能性があります。

プロジェクト管理

進捗、品質、課題、スケジュールなどを管理する費用です。

打ち合わせの進行や、発注側と開発側の認識を合わせる作業も含まれます。「管理費はシステムを作っていないから不要」と考えられがちですが、開発を予定どおり進めるために必要な工程です。

リリース・データ移行

完成したシステムを実際に利用できる状態にする作業です。

現在使用しているExcelや古いシステムからデータを移す場合は、データの整理や変換にも費用がかかります。

インフラ・外部サービス

サーバー、データベース、メール送信、決済サービスなどの利用料です。

開発費とは別に、毎月または利用量に応じて費用が発生する場合があります。

保守・運用

システム公開後の監視、不具合対応、問い合わせ対応、機能修正などの費用です。

見積書に含まれているのが「開発まで」なのか、「公開後の保守まで」なのかを確認しましょう。

システム開発の見積書サンプル

以下は、見積もりの考え方を分かりやすく説明するため、すべての工程を1人日5万円として計算した一例です。実際の単価や工数、金額は、担当者の役割や経験、必要な機能、開発条件によって変わります。

項目 主な作業 工数 金額例
要件定義 ヒアリング、機能整理 8人日 40万円
設計 画面、データ、権限設計 12人日 60万円
デザイン 主要画面のデザイン 6人日 30万円
開発 ログイン、登録、検索、出力 40人日 200万円
テスト 動作確認、不具合修正 14人日 70万円
プロジェクト管理 進捗・品質・課題管理 10人日 50万円
リリース・移行 環境設定、初期データ移行 6人日 30万円
合計 96人日 480万円

この表で重要なのは、480万円という合計金額だけではありません。

見積書だけでなく、提案書や契約書も合わせて、次の内容を確認する必要があります。

  • どの機能が開発対象に含まれているか
  • 各工程で何を作成するか
  • 修正対応が何回まで含まれているか
  • サーバーなどの月額費用が別に発生するか
  • 公開後の不具合対応が含まれているか

見積書の金額は同じでも、含まれる内容が違えば、実際に支払う総額も変わります。

同じシステムでも見積金額が違う理由

複数の開発会社へ同じ相談をしても、見積金額が大きく異なることがあります。これは、単価だけでなく、それぞれの会社が想定している内容が違うためです。

開発範囲が違う

例えば「予約システムを作りたい」という依頼でも、次の機能を含むかによって工数が変わります。

  • 会員登録
  • 予約の変更・キャンセル
  • メール通知
  • オンライン決済
  • 管理画面
  • 売上集計
  • 外部カレンダー連携

一方の会社はすべて含め、別の会社は予約登録だけを想定している可能性があります。

品質の考え方が違う

利用者が少ない社内システムと、多くの一般ユーザーが利用するサービスでは、必要なセキュリティや安定性が異なります。

見た目が同じでも、同時に利用できる人数、データのバックアップ、障害への備えなどによって費用が変わります。

開発体制が違う

経験豊富な担当者を多く配置する会社と、少人数で進める会社では単価や管理費が異なります。

金額だけでなく、誰が設計し、誰が品質を確認するのかも見ておきましょう。

曖昧な部分への考え方が違う

要件が決まっていない部分が多いと、開発会社は手戻りに備えて工数に余裕を持たせます。

反対に、安く見せるために曖昧な部分を見積もりに入れず、契約後に追加費用とする会社もあります。

見積もりに含まれる期間が違う

開発費だけを提示している場合と、公開後の保守費まで含めている場合があります。

最初の金額だけでなく、公開後も含めた総額で比較することが大切です。

見積書で確認したい8つのポイント

1. 作業内容が具体的に書かれているか

「システム開発一式」だけでは、何が含まれているのか判断できません。

機能や工程ごとに、作業内容と工数が分かれているか確認しましょう。

2. 開発範囲と対象外の作業が明確か

見積書、提案書、契約書のいずれにも含まれていない作業は、契約後に追加費用となる可能性があります。

見積書だけで判断せず、提案書や契約書も合わせて、何を作るのか、何が対象外なのかを確認しましょう。

3. 工数と単価の根拠を説明してもらえるか

すべての計算方法が細かく公開されるとは限りませんが、「なぜこの作業にこれだけの工数が必要なのか」を説明してもらえる会社は比較しやすくなります。

4. テストが十分に含まれているか

テスト費用を減らせば、見積金額は安くなります。しかし、公開後の不具合が増えれば、結果的に修正費用や業務への影響が大きくなります。

どのようなテストを行うのか確認しましょう。

5. 修正費用が含まれているか

デザインや機能の修正が何回まで含まれているか、それを超えた場合はいくらかかるかを確認します。

6. 追加費用が発生する条件が明確か

機能追加、仕様変更、納期変更などによって追加費用が発生する場合があります。

何を変更すると追加料金になるのか、契約前に確認しましょう。

7. 保守・運用の範囲が明確か

システム公開後の不具合対応、問い合わせ、サーバー管理、機能改修が含まれているか確認します。

月額費用だけでなく、対応時間や対応内容も比較しましょう。

8. 完成と判断する条件が決まっているか

どの状態になれば納品完了となるのかを確認します。

完成条件が曖昧だと、発注側は「まだ完成していない」、開発側は「契約範囲は完了した」という認識の違いが生まれます。

複数社の見積もりを比較する方法

システム開発の見積もりを比較するときのポイント

相見積もりでは、合計金額だけを横に並べないことが重要です。

以下の項目を同じ条件で比較します。

比較する項目 確認する内容
機能 必要な機能がすべて含まれているか
工程 要件定義から保守まで、どこを依頼できるか
工数 工程や機能ごとの作業量が分かるか
体制 担当者の役割と人数が分かるか
スケジュール 開始時期、開発期間、確認期間が現実的か
成果物 設計書、ソースコード、操作説明書などを受け取れるか
テスト どの範囲まで確認するか
保守 公開後の対応内容と費用が分かるか
追加費用 どのような場合に発生するか

比較条件をそろえるため、各社には同じ資料を渡します。目的、必要な機能、利用人数、予算、希望時期などを同じ条件で伝えると、見積金額の違いを判断しやすくなります。

注意が必要な見積書の特徴

良い見積書と注意が必要な見積書の違い

次のような見積書は、契約前に詳しい説明を求めましょう。

「一式」の項目が多い

「設計一式」「開発一式」だけでは、含まれる作業が分かりません。

項目を細かく分けられない理由と、具体的な作業範囲を確認します。

他社と比べて極端に安い

安いこと自体が悪いわけではありません。しかし、必要な工程が抜けていたり、公開後の対応が含まれていなかったりする可能性があります。

「なぜ安くできるのか」を確認しましょう。

前提条件が書かれていない

発注側が素材を用意する、データを整理する、確認を一定期間内に行うなど、見積金額には前提が置かれている場合があります。

前提を満たせなかった場合の追加費用も確認しておきましょう。

テストや管理の費用が少なすぎる

実装以外の工程を減らすと、見積金額は安く見えます。しかし、品質や進行管理に問題が起きる可能性があります。

どのように品質を確認するのか説明してもらいましょう。

保守の内容が分からない

「保守費 月額○万円」とだけ書かれていても、何を依頼できるのか分かりません。

対応時間、連絡方法、障害対応、軽微な修正が含まれるかを確認します。

見積もりを依頼する前に整理すること

要件を細かく決めてからでなければ、相談できないわけではありません。ただし、最低限の情報を整理すると、各社の見積もりを比較しやすくなります。

  • どの業務を改善したいか
  • 現在どのような問題が起きているか
  • 誰がシステムを使うか
  • 絶対に必要な機能は何か
  • 後から追加できる機能は何か
  • いつまでに必要か
  • 予算の上限や目安
  • 現在使用しているシステムやExcelがあるか
  • 外部サービスとの連携が必要か
  • 公開後の運用を誰が担当するか

「顧客管理システムが欲しい」とだけ伝えるより、「毎月20時間かかっている顧客情報の転記を減らしたい」と伝えた方が、開発会社は必要な機能を提案しやすくなります。

システム開発の費用を抑えるには

単価だけを下げるのではなく、最初に作る範囲を整理する方が、無理なく費用を抑えられます。

必要な機能に優先順位を付ける

すべての機能を一度に作らず、最初に必要な機能と後から追加する機能に分けます。

既存サービスを利用する

すでにあるクラウドサービスやパッケージで対応できる部分は、ゼロから作らない方法もあります。

確認する担当者を決める

社内の意見がまとまらず、確認や仕様変更を繰り返すと工数が増えます。判断する担当者と期限を決めておきましょう。

目的を具体的に伝える

作りたい機能だけでなく、解決したい問題を伝えることで、より簡単な方法を提案してもらえる可能性があります。

開発費全体の考え方や規模別の目安については、システム開発の費用相場と、見積もりが2〜3倍変わる理由で詳しく解説しています。

システム開発の見積もりに関するよくある質問

見積もりは何社に依頼すればよいですか?

金額や提案内容を比較するため、複数社へ依頼する方法があります。ただし、各社に異なる内容を伝えると正しく比較できません。同じ資料と条件を渡しましょう。

一番安い会社を選んでも問題ありませんか?

金額だけでは判断できません。必要な機能、テスト、保守などが含まれているかを確認したうえで比較する必要があります。

要件が決まっていなくても見積もりを依頼できますか?

概算の相談はできます。ただし、要件が曖昧な段階の見積もりは、正式な金額ではなく目安として考えましょう。要件を整理した後に金額が変わる可能性があります。

見積金額より高くなることはありますか?

契約後に機能を追加したり、決めた仕様を変更したりすると、追加費用が発生する場合があります。追加費用が発生する条件を契約前に確認しましょう。

保守費用は必要ですか?

システムの利用方法によって異なりますが、不具合やサーバー障害、外部サービスの変更などに対応するため、公開後の運用体制は決めておく必要があります。

まとめ

システム開発の見積もりは、合計金額だけで良し悪しを判断できません。

大切なのは、必要な機能、作業範囲、工数、テスト、保守、追加費用の条件が明確になっているかを確認することです。

複数社を比較するときも、「どこが一番安いか」ではなく、同じ条件で、何が含まれているかを確認しましょう。

ニチコマでは、業務上の問題や必要な機能を整理する段階から、システム開発の相談を承っています。「何を作ればよいか決まっていない」「まず費用感を知りたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら

参考資料