久しぶりに共有フォルダを開いたとき、あった。

最終版_修正済み_v3.xlsx。

最終更新日は2021年3月。5年前だ。ファイルを開こうとして、やめた。開かなくても分かる。あのころ必死で作った集計表。誰かが修正して、また誰かが修正して、最終版が3つになった、あの表だ。


そのファイルが存在し続けているということは、5年間、誰も変えられなかったということだ。

「変えようとしなかった」のではない。変えようとした人は、きっといた。新しく入った社員が「このファイル、整理した方がよくないですか」と言ったかもしれない。誰かが「そうだね、いつかやろう」と返して、それきりになった。その「いつか」が5年になった。


まずコストの話をする。

月に1回この作業をするとして、「どれが最新か確認する時間」「担当者が変わるたびに説明する時間」「ファイルが壊れないか怖くて誰も触れない時間」を合わせると、担当者一人あたり月30分はかかる。3人いれば月90分。1年で18時間。5年で90時間。

時給3,000円で計算すると、27万円。

ただ、これはまだ表面の話だ。

データビジュアル


本当のコストは、数字に出ない。

「このファイル、整理した方がよくないですか」と言って、立ち消えになった経験をした社員は、次から言わなくなる。一度だけじゃない。2回、3回と同じことが繰り返されると、「ここでは改善提案をしても意味がない」という学習が起きる。口に出さなくても、体で覚えていく。やがてその人は、問題を見つけても黙るようになる。

そうやって、少しずつ、会社の中から「変えようとする人」がいなくなっていく。

Excelのファイル名は、その結果として残っているものだ。原因ではなく、結果だ。


なぜ変えられないのか

問題は全員が分かっている。なのに変わらない。この構造には、いくつかパターンがある。

「緊急ではない」が優先度を下げ続ける

炎上していないから、誰も動かない。月30分の非効率は、締め切りを破ることも、クライアントを怒らせることもしない。だから常に「後でやること」のリストに入ったまま、いつまでも後回しになる。緊急度と重要度は別物だということは頭では分かっていても、日々の業務は緊急なものから片付いていく。

「誰がやるか」が決まらない

全員が問題だと思っているのに、全員が「自分がやることではない」と思っている。担当者が明確でないまま「いつかやろう」になると、誰も着手しない。会議で「どうにかしましょう」と決まっても、次の会議までにアクションが起きない。

「変えると余計に手間がかかる」という恐怖

今の運用は、壊れかけているが一応動いている。手をつけると、一時的に混乱する可能性がある。その混乱を引き受けてまで変えようとする人が出てきにくい。現状維持には勇気がいらないが、変えることには勇気がいる。

図解

変えられた会社との分岐点

同じような状況から抜け出せた会社と、そうでない会社を分けるのは、能力でも予算でもない。

「小さいうちに動いた」かどうかだ。

問題が小さいうちは、解決も小さい。ファイルの整理なら、半日もあれば片付く。運用ルールを一枚書いて、共有して、それで終わる。ところが5年放置すると、ファイルへの依存が深まり、誰も触れなくなり、整理のためにプロジェクトを組まなければいけなくなる。

もう一つの分岐点は、「誰かが決めた」かどうかだ。

「いつかやろう」を「今週やる」に変えた人が一人いるかどうか。会議で決まったことをその日のうちに着手した人がいるかどうか。そのたった一歩の差が、5年後のフォルダの中身を変える。

図解


「大したことじゃないんですが」と思っているなら、今が一番いいタイミングだ。

大きな問題になってから動くより、小さいうちに動く方がずっと安い。5年経ってから整理するより、今日整理する方がずっと速い。そして何より、「どうしようかな」と悩んでいる時間そのものが、もったいない。

小さく見える問題ほど、今動くことに価値がある。5年前に誰かが動いていれば、あの27万円は消えなかった。「変えようとする人」も、少し長く残っていたかもしれない。

悩む前に、話してみてください。

お問い合わせはこちら

今すぐ動いた方が、絶対に安い。